Sunday, October 11, 2009

浮浪者

こどものころ、はじめて浮浪者をみたとき衝撃をうけた。
ぼくは六歳だった。兵庫は伊丹駅。午後8時。おじと駅
前をとおりかかったときのこと。

駅前に茶色の毛布をひいて一人の老婆が座っていた。ブ
ツダンによくあるちーんというアレをちんちんやりなが
ら老婆はネンブツをとなえていた。

ぼくはもう驚愕した。その老婆のネンブツが「かーねーを
ーく、れー」という節だったからでも、ぼくをにらみつけ
たその目のかたほうだけが異様におおきかったからでもなく、
「おお、お母ぁん、こんなとこでまた念仏唱えてぇ。はよう
帰らんかぁ」
とおじがいったからだ。

おじはそういうと財布から千円札をだして例のチンチンの中
に入れた。

「おおの、おおの、こりゃ、あんたは孝行息子やぁ、へぇへぇ」
四国なまりの老婆は歯のない口でわらった。

ぼくはほんとうにびっくりした。あの人はおじさんのお母さ
んなのか!!と。 

おじはガハハハと笑ってぼくの手をひいてその場をたちさった。

いまはそれが冗談のやりとりだったとわかるが、そのときはま
ったくわからなかった。トラウマになるくらいの衝撃をうけた。

大きくなってからおじさんにその話をしたとき、おじは
「あれが満州で生き別れた実の母で。。。」と落語家のような口
調でまだいっていた。それからふいに

「駅の蛍光灯はあれやなぁ、ありゃ、白すぎんか?」
といった。




the shakers (yuji)


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In October 2008, Shakers was born in the small apartment in Bushwick. Three music enthusiasts got together, listening to the beautiful music. This ritualistic gathering was simply called Listening Party, and it usually went down until six in the morning. Each one of us were baptized by pure pleasure of every elements of the sound, and formed organically the group called Shakers.