小学生の頃、友達の引っ越しはひどく悲しかった。
放課後、毎日遊びに行った家や庭が少しずつ片付いていって、
日にちが迫ると、どうしようもない無力感に襲われたものだ。
自力で遊びに行ける経済力もなく、引っ越しを阻止する権力もない。
小さな紙には住所と電話番号だけが書いてあって、
それ以外には、携帯もメールもなかったから、
いくつもの街をへだてた物理的な距離は、今の千倍にも感じられた。
今、大人になって、自由に使えるお金がわずかだけどあって、
好きな場所へ好きなときに行ける自由だってあるのに、
どうしても、あのときと同じ無力感が、心を包んでいる。
遠くの、知らない街へ行ってしまう人へ。
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