チャイナタウンの淀んだ風景は、風が冷たいからいつもより少しだけキリっとしている。
どこかでかいだような匂いだと思ったと同時に、
地元の公園や、ボールの感触や滑り台のキュッと鳴る音や、白く吐く息が
一気にフラッシュバックした。
大人になると、子供のときに鮮明だった季節へのセンサーが、どんどん衰えて鈍くなるのがわかる。
だけど、子供のときうんと辛かったことは今ではほとんどヘッチャラだ。
喜怒哀楽の平均値は、すこしずつ、だけど確実に下がる。
それは努力次第でどうにもらならなくて取り戻せないもののひとつだと思うと、
どこかに行って昔の自分に会ってみたいような気がちょっとだけした。